ステンレス協会 会長
木下 洋
(新日鐵住金ステンレス株式会社 代表取締役社長)
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
新たな年のスタートに当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。
世界経済は、金融危機以降、各国の大規模な景気刺激策、新興国マーケットの拡大等を背景に、緩やかながらも回復基調を継続しましたが、昨年後半においては、政策効果の剥落、ギリシャ財政危機等に伴う景況感悪化、中国の景気加熱抑制等から、回復の度合いは鈍化しております。
日本におきましても、昨年前半から夏場にかけては、エコカー補助金等の政策効果、猛暑関連需要の拡大等から個人消費が回復、また中国、新興国向を中心とした輸出の拡大等を背景に、金融危機以前迄の水準には至らないものの、経済全体としては回復基調を維持致しました。一転、年後半におきましては、エコカー補助金終了等に伴う反動減、更には大幅且つ急激な円高進行による輸出競争力の低下等から、再び経済は減速、先行きは不透明と言わざるを得ません。
ステンレス業界もこうした中にあって、昨年は、未だ力強い回復を実感するには至らず、先行き不透明感を一層強くすると共に、厳しい国際競争に曝されていることを痛感した1年であったと思います。
こうした状況を踏まえ、本年、ステンレス業界としては、以下の観点を軸足に取り組むべきと考えています。
まず、現在も世界最高水準にある「日本のモノ作り」の実力を最大限に活かすことです。ステンレスは、国内においても、様々な用途に応じた多岐に亘る鋼種・形状での素材の製造、そして最終用途に即応したサイズへの加工・研磨・仕上、最終製品への適用に至るまで、足の長い、裾野の広い品種であり、それぞれのプロセスにおいて、極めて高い技術力を持っております。「日本のモノ作り」の実力を更に磨き上げ、国際競争力を維持していくためには、個々のプロセス毎の努力はもとより、前後工程と一体なった産業全体としての連携、「モノ作り」一貫での競争力維持を志向していくべきであると思います。
また一方、為替の変動を含め、中国、欧米等の経済動向が日本の産業全体に大きく影響を及ぼす中、原料が製造コストの相当部分を占め、なお且つ、その原料価格が投機的な要素で大幅に振れるステンレスは、外的な変動要因の影響をより受けやすい品種であります。先行き不透明な中、外的要因の動向を読むことは困難です。こうした状況下なればこそ、たゆまぬ「自助努力」、また、あらゆる事態の変化を受け止め、「自己責任」で前向きに打開策を講じることが重要であります。こうした、個々の自立した営みをベースに、一層、切磋琢磨することで、日本のステンレス産業の基盤は、環境変化にも揺るがない、確固たるものになると信じています。
勿論、これ迄のたゆまぬ努力で築き上げられた高い技術力を、ハード面のみならず、ソフト面も含め、一層磨き上げていくことは絶対条件であります。ステンレス協会として、各委員会活動等を通じて、こうした動きをサポートしていきたいと考えております。
また、当然のこととして、ステンレスというリサイクル性に優れ、環境に優しい、クリーンな素材の魅力を広く浸透させ、ステンレス全体の需要を創出し、裾野を広げていくことに、協会としても引き続き積極的に取り組む考えです。「ステンレスの良さを知る人、使う人を一人でも多くしたい」という思いを込めながら、会員各社及び需要家の皆様のご協力を賜りつつ、活動していく所存ですので、何卒宜しくお願い申し上げます。
最後になりますが、本年がステンレス業界にとって、新たな未来に向けた、有意義な1年となりますよう祈念致しまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。