ステンレス協会 会長 木村 始 (日本冶金工業株式会社 代表取締役社長 ) |
謹んで新春のお喜びを申し上げます。年頭にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
昨年は、オリンピックイヤーに相応しい明るい1年を期待しましたが、振り返ると、政治・経済のグローバル化の波に正に翻弄される一年でありました。シリア内戦やイスラム国の台頭を受けた欧州への難民の流入は、イギリスの欧州連合からの離脱、さらには、米国におけるトランプ大統領の誕生の遠因にもなっていると考えられます。こうした混乱は、ベルギー、フランス、バングラディッシュ、ドイツと世界各国で発生したテロリズムにも影響しており、今後とも世界の政治経済の流れに大きな影響を及ぼすものと考えられます。
一方、日本に目を転じると、外交面では、中国や韓国さらにはロシアとの関係には目を離せませんが、内政面では世界的にも極めて安定した政治体制となっており、経済金融政策を含め、ある意味恵まれた環境が現出していると言えるでしょう。
さて、昨年以降我が国のステンレス産業は、原料を中心とする急激なコスト増に見舞われています。円安を含めたニッケル価格の上昇に加え、年末には「ショック」とも云えるクロム価格の高騰、又鉄鋼業全体として原料炭や鉄鉱石など価格上昇も急であり、メーカーのコスト構造が大きく変化する事態に直面しています。こうした変化を適切に価格転嫁して行かないと、ステンレス産業の安定的な成長は確保できません。ステンレス流通産業とともに力強い取り組みが求められる1年になると考えます。
大変難しい舵取りを強いられる1年になるとは思われますが、幸いなことに国内需要は、比較的堅調な需要に支えられているとともに、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けた動きもいよいよ活発化すると期待されています。国土強靭化や交通・インフラ等の整備に向けた様々な動きも具体化してくるでしょう。決して予断は許されませんが、年始に当って明るい将来を期待できる1年と言えるのではないでしょうか。
日本のステンレス産業は、永年にわたる努力の結果、技術・生産・販売・流通等を結集した総合力を確保しています。このような大きな変化の時代こそ、高度な技術力と豊富な経験を有する我々にとってのチャンス到来と考えられます。ステンレスは、そもそもリサイクル性に優れ、耐食性・強度・加工性・意匠性など場面に応じて多彩な特性を持つ、多様な可能性を秘めた素材です。新たな需要やニーズに対してこのポテンシャルを大いに生かし、チャンスを具体化するべきと考えます。さらに、超高齢化社会や水素社会等、新たな分野への商品開発や市場開拓に切磋琢磨しながら、スピード感を持って取組んで行く必要があると考えます。
ステンレス協会と致しましても、業界の発展に寄与すべく、今年も尽力していく所存でございますので、更なる会員各社の格別のご指導とご支援をお願い申し上げます。
最後になりますが、皆様方のご多幸を祈念いたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。