ステンレス協会 会長 井上 昭彦 (日鉄ステンレス株式会社 代表取締役社長) |
新年明けましておめでとうございます。
皆様におかれましては、令和7年の新春を穏やかに迎えられたこととお慶び申し上げます。
改めて昨年を振り返りますと、世界経済は、主要先進国におけるインフレ率が低下し、コロナウイルス感染症の影響からの回復ペースの減速に歯止めがかかった一方で、中国では個人消費や設備投資が低迷し、減速感が強まりました。
我が国では、昨年3月には約34年ぶりに日経平均株価がバブル期の最高値を更新し、また安定的な物価上昇や賃金引上げの動きなどを受け、8年に及んだ日本銀行のマイナス金利政策が解除されるなど、大きな転換点を迎えました。一方で、深刻な人手不足が経済活動の回復の流れに影を落とし、鋼材需要への反映を妨げる事情も見受けられました。
かかる環境下、本年もステンレス鋼産業は、様々な社会課題の解決に貢献することでお客様からの信頼を維持し、社会に役立つ業界であり続けたいと存じます。この理念の下、本年も昨年6月の協会長就任時に申し上げた次の3点を軸に、積極的な取組みを進めて参ります。
1点目は、ステンレス鋼の開発と製造を通じて、社会が抱える課題に貢献することです。日本のステンレス鋼メーカーは高品質の汎用鋼種に加え、機能を高めた独自鋼種を開発し、品質競争力を維持・向上させております。脱炭素社会の実現や、年々激甚化する災害に備えた国土強靭化等、時々刻々と変化する社会・産業課題に対し、今日まで私達が培ってきた技術力・商品力が貢献して参ります。製造から適用技術まで含めた「ものづくり」の実力に磨きをかけ、社会に対する使命を果たすべく、当協会として、需要開発関係の機能強化に努めて参ります。
2点目は、地域に密着した製造、流通、加工に係る「ものづくり」の現場の活性化です。地域に密着した「ものづくり」の現場こそが地域の経済・雇用、延いては調和のとれた国土の発展にも寄与します。少子高齢化による労働力人口の減少が進む中で、労働生産性の向上に係る取り組みが、経済成長の維持・向上、更には将来の我が国産業基盤の強靭化に貢献するものと信じており、当協会として、標準化・技術関係の機能や調査・統計関係の機能を充実させて参ります。
3点目は安全活動の一層の充実・向上に資する取組みです。「安全」こそが全ての基本であることは論を俟たないところ、当協会としても労働災害の未然防止に資する様々な取り組みを、能う限り支援して参ります。
ステンレス鋼は、高耐食・長寿命、リサイクル性、美観等、長所が非常に多い素材であり、私達が有する世界最高水準の技術力と「ものづくりの力」を結集し、ステンレス鋼を通じて社会に貢献することこそが当協会の使命と考えております。
結びにあたり、皆様にとりまして、本年が有意義で実りの多い年となりますことを祈念致しまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。