LowC、Nフェライト系ステンレスの特長について

製錬技術の発達により、C、Nを従来レベルより低下させた鋼種で,一般的に高純度フェライト系ステンレス鋼と呼ばれます。フェライト系ステンレス鋼はSUS430に代表されるようにSUS304に比較して安価である反面、加工性,溶接性,耐食性が劣っているという欠点があります。この欠点を改善するために不純物元素のC、Nを各々0.03%以下に低下させ,さらに安定化元素であるTi,Nbを添加した鋼種です。

オーステナイト系ステンレス鋼の欠点である応力腐食割れが発生しないことが最大の特徴で、高い耐食性の必要な用途にはCrを増量しさらにMoを添加した鋼種が使用されます。

加工性についてはSUS430より深絞り性は向上しますが、フェライト系ステンレス鋼特有のリジング(表面のうねり)が肌荒れ状に発生することがあり注意が必要です。また厚板(4mm以上)の場合は靭性の劣化が問題となります。

溶接性は予熱や後熱の必要なく溶接可能であり、SUS430の溶接部に発生するマルテンサイトや炭化物の生成がないため耐食性や靭性の劣化は改善されています。ただし、溶接時にはArシールを充分行ない空気中のN,Oの混入を防止する必要があります。
表1に代表的なLowC、Nフェライト系ステンレス鋼の鋼種と特徴を示します。

表1 LowC,Nフェライト系ステンレス鋼の鋼種一覧

鋼種名 組成と特徴 主な用途
SUS430LX SUS430を低C,NにしてTiかNbを添加したもので主に加工性,溶接性を改善 業務用厨房機器、自動車内外装、自転車リムなど
SUS430J1L SUS430LXにCuを0.5%添加したもので、加工性,溶接性のほか耐食性も改善 自動車外装、排気ガス処理装置、家電製品など
SUS436J1L SUS430LXにMoを0.5%添加したもので、主に耐食性を改善 自動車排気ガス処理装置、厨房機器、家電製品など
SUS436L SUS436J1LにさらにMoを増量(1%添加)したもので17Cr-1Mo組成の耐食性を重視 自動車排気ガス処理装置、ジャーポット,給湯機器など
SUS443J1 21Cr –0.4Cu組成にTi、Nbなどを添加し耐食性を改善 建築外装、建築金物、産業機械、厨房機器
SUS444 19Cr-2Mo組成で、Ti、Nbを添加し,特に耐応力腐食割れ性が優れる 温水機器、貯水槽、食品機器熱交換器など
SUS445J1 22Cr-1Mo組成でNbを添加、主に耐候性を改善 屋根材,建築外装など
SUS445J2 22Cr-2Mo組成でNbを添加、SUS445J1の耐候性をさらに改善 屋根材,建築外装など
SUS447J1 30Cr-2Mo組成で、耐食性(耐応力腐食割れ性耐孔食性)が非常に優れる 有機酸プラント、苛性ソーダプラント,電池ケースなど
SUSXM27 26Cr-1Mo組成で、耐食性(特に耐孔食性)が優れる 有機酸プラント、公害防止機器,海水プラントなど
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